- Foods

藤原ヒロユキ
珠玉の「クラフトビール」が飲める店へ。- 018
2010.06.30
ブームから文化へと進化した 「クラフトビール」で乾杯!
Story
かつて日本全国でブームを巻き起こした「地ビール」が、「クラフトビール」と名前を変え、ここ数年、再び盛り上がりを見せている。東京を中心に専門店も急増し、これまでの日本人のビール観すら変えつつある、その理由とは? ビールの達人でイラストレーターの藤原ヒロユキさんに、そうした流れの中心に位置する、美味しいクラフトビールが飲めるお店を教えてもらいました。Text by Kentaro Inoue / Photo by Tomoyuki Teraguchi , Tokyo Faves / Photo cooperation by Shimbashi DRY-DOCK
日本の『クラフトビール』の始まりは、1994年の酒税法改正で小規模醸造が可能になったことによって全国各地で起きた、地ビールブームに遡る。95年当時、わずか10数社だったメーカーは、数年の間に200社以上にまで増えたという。
「不幸なことに、そのブームが、地ビール=お土産ビールというイメージをつけてしまったんです。僕はこれを“温泉饅頭化”と言っているんですが、ブームにのって志や勉強が浅いまま始めてしまった造り手も多かった。たとえば、地産地消にこだわるあまり、無理にその土地の名物や特産品を使ったり……。もちろんそれで成功することもあるんですが、結果として『地ビールはマズイ』という印象だけが残ってしまったんです」
一方、受け手(飲み手)の側もよくなかった、と藤原さんは言う。その理由のひとつとして、地ビールの多くが、日本でふだん飲まれている下面発酵のラガーとは違う、上面発酵のエールだったことも大きい。
「今までそれこそ100年近く、日本人って、ビールは黄金色でキンキンに冷やしてグビグビ飲むものだと教育されてきた。本当は何十スタイルもある奥深い世界なのに、ビール=ラガー(ピルスナー)の1種類だけだったんです。それで、さまざまなスタイルの地ビールが理解できず、変わった味のするビールと思ってしまった。また、それほど興味がない野次馬的なファンも多かったし、マニアと呼ばれる人たちが閉鎖的な世界をつくってしまったこともあって、ブームはすぐに終わってしまいました」
反面、よかったこともあった。それは知名度が上がったこと。ブームが去った一方で、静かに「造り手」「受け手」、そしてお店や酒販などの「供じ手」の三者が徐々に育ち始め、『地ビール』は『クラフトビール』として、広まっていくことになる。
「最近では、マイナスイメージのある『地ビール』から『クラフトビール』という呼び名に変わりつつあります。また、今のファンはそこそこ勉強しているし、しようとしている。さらにここ数年は、『わからないけど美味しいんだから飲んだっていいじゃん』というムードも出てきました。やっと文化として定着してきたんだと思います」
実は、そもそも「クラフトビール」には、明確な基準はない。あえて定義するとすれば「クラフト」という言葉が表すとおり“手づくり感”という一言に尽きる。
「僕の中での基準は“分業化されていない”ということ。たとえば、大手のビール会社だと、発酵担当の人はそのことについては詳しいけど他のことは知らない。パッケージ担当の人も同じ、つまり工場なんです。理想は、原料選びから瓶詰め、セールスまで、すべてをひとりでやること。ただ、それは物理的には難しいので、意思の疎通ができる範囲の規模で丁寧につくっている、というのが『クラフトビール』なんだと思います」
ビギナーにもおすすめの「クラフトビール」とは?
現在、日本で販売されているものだけでも数百種類に上る「クラフトビール」。初めてその世界に入っていく人は、いったいどんなものから飲んだらいいのだろう?
「まずひとつは、アメリカンスタイルの“ホッピー”なビール。アメリカ産のホップを使った、香りと苦味のしっかりしたものですね。日本なら、『よなよなエール』や『伊勢角屋のペールエール』、『ベアードビールのライジングサン』とか。海外のものだったら、『アンカー』や『グリーンフラッシュ』がおすすめです。日本の大手のビールにはない、飲む前から感じる“アロマ”の文化が味わえるし、味も非常にわかりやすくて覚えやすい。
もうひとつは、ホワイトビールから果実を使ったワインのようなビールまで、味わいに多様性があるベルギーのもの。もし、ベルギービールがどんなものか知りたかったら、『シメイ』の赤・白・青を順番に飲めばなんとなく理解できると思います。酸味のある『カンティヨン・グーズ』はびっくりすると思いますよ。
あとは、イギリスなら『フラーズ』の『ロンドンプライド』や『ロンドンポーター』。イギリスビールは炭酸も強くなくて、どちらかというと大人しめ。典型的なパブエールで、冷たくせずお茶をすするようにダラダラと飲む感じ。
また、『箕面ビール』もおすすめです。日本のビアフェスの人気投票で1位に選ばれている、小麦を使ったフルーティな『ヴァイツェン』や、ホップをふんだんに使った『ダブルIPA』、イギリスのWorld Beer Awardsで1位になった本格的な黒ビール『スタウト』なんかもいいですね。
実はここ数年で、日本のクラフトビールのレベルは相当上がっていて、アメリカで2年に一度開かれているワールド・ビア・カップでは、08年には約80カテゴリのうち10銘柄、10年は5銘柄が入賞。中でも沼津の「ベアードビール」は、3銘柄が入賞(2010年)というすばらしい実績を残しているんです」
美味しい「クラフトビール」が飲めるお店はココ!
こうしたクラフトビールが飲める専門店は、ここ3年余りでグンと増えたそう。中でも東京には個性あふれる魅力的なお店が数多く、クラフトビール好きにとって、日本でもっとも恵まれた場所といえる。
「昔も“何十種類のビールが飲める”ことをうたう店はありましたが、日本のビールと同じピルスナー系のものを集めただけのところがほとんど。それが今は、“何十種類じゃなくて何十スタイル”に変わってきたんです。
まず、おすすめしたいのは、新橋の『ドライドック』。温度管理やグラスの選び方、洗浄、注ぎ方までこだわった、ビールを一番美味しい状態で飲ませてくれるすばらしいお店です。また、両国の『ポパイ』は、まさに日本のクラフトビール界のリーダー的存在。タップの数は日本一だし、昔からリアルエールをしっかり提供し続けている老舗中の老舗です。神田の『蔵くら』も、古くからある1軒。昨年移転をしてお店もスタイリッシュにリニューアルされました。以前からずっと、日本のクラフトを応援し続けていて、管理の行き届いたビールが味わえます」
また、世界のビールや“生”など、独自のこだわりを打ち出すお店も増えている。
「アメリカンクラフトを楽しみたければ、渋谷の『クラフトヘッズ』。現地のブリュワーとコネクションをつくって直接買い付けもしている、アメリカンスタイルを日本に根付かせたお店です。世界の珍しいビールが味わえるのは、渋谷の『カタラタス』。1年間世界を旅してビールの見識を深めたというご夫婦が経営されていて、ここでしか味わえないビールも多くあります。また、下北沢の『うしとら』は、ビール好きの若い2人の店主が始めた生ビール専門店。気軽にフラリと行きやすいお店で、根強いファンが多い1軒です。料理が美味しいというのもうれしいですね」
そして、藤原さんがクラフトビールの世界をさらに楽しむうえで大切にしているのは、料理との相性だという。
「ビールに合う料理というと、辛くて味の濃いものというイメージがあると思いますが、それは“ビールに合う”のではなく、“ピルスナーに合う”料理。ビールに合う料理を探す一番簡単な方法は、ドイツ料理にはドイツビール、ベルギー料理にはベルギービールと、国で合わせること。また、麦芽を焦がした苦味のあるビールと、ロースト感のある料理など、味わいで合わせる方法もあります。味の相関関係は難しいので、詳しく知りたい方は、『知識ゼロからのビール入門』を読んでみてください。僕は、たとえ甘いお菓子でも、必ず合うビールを見つけてくる自信がありますね(笑)」
最後に、これからクラフトビールの世界にはまりたいと思っている方へ、こんなアドバイスをもらった。
「まずは飲んで、体に入れて覚えることですね。これだけは字で読んでもわからない。それでもまだクラフトビールは美味しくない、合わないと言うのなら、僕はその人がかわいそうだな、と思うだけ。ただ、損していることに気づいたとき、きっと慌てると思いますよ(笑)」
おすすめ記事
- Fashion

黒田領
スタイリッシュな「帽子」が揃うショップ。- 017
- Sports

南井正弘
自分にぴったりの「ランニングシューズ」を見つける。- 016
- Culture

冨澤良子
進化し続ける、東京の素晴らしき「図書館」。- 015
- Sports

名和秋
プロボウラーが推薦するボウリング場へ。- 014










