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    進化し続ける、東京の素晴らしき「図書館」。
  • 015

2010.06.09

サービス重視、専門分野に特化、ネット対応…… 進化し続ける東京の「図書館」へ。

Story

子どもの頃はよく行っていたのに、大人になってからは……という人も多いのでは? ネットでの取り寄せサービスやカフェテリアは当たり前、夜遅くまでやっていたり、個室があったり、電子図書が借りられたり。そう、図書館は今、大人が使える魅力的なスポットへと変わりつつある。そんな最新の図書館事情を、『TOKYO図書館日和』の著者・冨澤良子さんに教えてもらいました。
Text by Kentaro Inoue / Photo by Shinichi Yokoyama , Tokyo Faves / Photo cooperation by Tokyo Metoropolitan Library

011_ph1「本屋さんとか、駅にある図書コーナーとか、もともと本のあるところが好きだったんです。中でも、図書館は私にとって一番落ち着く場所。子どもの頃は、自分で勝手に月曜日と木曜日は“図書室の日”と決めていたほどなんです(笑)」

会社員時代には、区役所の食堂でランチを食べ、併設された図書室で本を読みながら休憩していたという冨澤さん。著書『TOKYO図書館日和』では30以上の図書館を取材したほか、国内から海外まで、今もさまざまな図書館を訪れている。

「実は、ここ5~10年で、図書館ってすごく進化しているんです。もちろんネットが発達して、予約や取り寄せが自宅からできるようになったっていうのも大きいんですが、おしゃれなカフェスペースがあったり、個室があったりと、施設も充実してきたし、ネットにも繋がるので仕事をすることもできる。ちょっとぼーっとしていると、どんどん新しい図書館やサービスが出てきてしまうので、私もビックリしているくらいで」

IMG_0117図書館を大きく2つに分類すると、子どもから年配の方まで幅広い世代のニーズに応える公立の図書館、そしてあるひとつのジャンルやテーマに特化した専門図書館に分けられる。

「近隣の別の図書館の蔵書を取り寄せることもできるので、もはや本を借りるだけだったらどこの図書館にも差はありません。でも、私はあえて休みの日に、日常をリセットするために図書館に行きます。そういう使い方をしていると、やっぱり“居心地のよさ”が重要になってくるんですよ」

さまざまなサービス、個性を打ち出し始めた公立図書館

IMG_0011昔はどこも同じようなつくりで同じような本を並べていた公立の図書館だが、ここ数年で差別化が進み、かなり個性や特徴がはっきりしてきたという。そんな中で、冨澤さんがおすすめする図書館とは?

「お気に入りは、広尾の有栖川宮記念公園の中にあって、ロケーションも気持ちがいい『都立中央図書館』。蔵書数は国内の公共図書館では最大級、貴重な本も多く所蔵しているので、研究者の利用も多い図書館です。ここは、大きな荷物は預けるスタイル(A4以内は持ち込み可)なので、何をするにも集中できる(笑)。調べたければ資料は山のようにあるし、おなかが減ったらカフェテリアでごはんを食べることもできます。私は『今日は読書をするぞ!』という日に利用していますね。

もう1軒の都立図書館で、2009年にリニューアルしたばかりの『都立多摩図書館』は、公共の図書館としては全国で初の雑誌専門図書館。『東京マガジンバンク』には、一般雑誌から学術雑誌まで約1万6000誌が揃っていて、充実したバックナンバーや『創刊号コレクション』に圧倒されますね」

IMG_0070そして最近増えているのが、利用する人たちのさまざまなニーズに合わせた独自のサービスを打ち出す図書館だ。

「『北区立中央図書館』は、大人と子どものフロアが分かれているので、静かに本が読めますし、たとえばお子さん連れで少し声を出しても大丈夫。中高生向けが数人で利用できるYAスペースや、授乳もできる子育て情報支援室なんかもあって、いろいろな年代・立場の人が利用しやすい図書館ですね。

ビジネスマンにおすすめなのは、平日22時まで開いている『千代田区立図書館』。閲覧室も一般とビジネスユーザー向けに分かれていて、まさに書斎的な使い方ができます。またここには、電子図書の貸し出しをする『Web図書館』というサービスがあって、図書館に行かなくても本が借りられるんです。日本武道館のある北の丸公園を見下ろす、9階からの眺めにも癒されますね」

また、昔ながらの建物をうまく使っているところや、併設された施設が魅力的な図書館もあるという。

IMG_0073「先ほどの『北区立中央図書館』は、もともと陸軍の工場だった赤レンガ倉庫をそのまま使っていて、グッドデザイン賞にも選ばれました。あと、特別大きい図書館ではないんですが、『江東区立深川図書館』は、クラシカルな外観とところどころにステンドグラスが使われたモダンな内装がすてきです。

少し変わったところでは、同じ建物の中にプラネタリウムがある『中野区立中央図書館』と『世田谷区立中央図書館』。また、『台東区立中央図書館』には、池波正太郎記念文庫があって、著作はもちろん、ゆかりの品が展示されていたり、池波正太郎本人の書斎や本棚なども見られるんです。

それから、今年の5月にリニューアルオープンした『渋谷区立中央図書館』にも注目しています。ここ、以前は290円でカレーが食べられたんです。ちなみに、こうした区立の図書館は、今は在住在勤でなくても貸出サービスを利用できるところがほとんどなので、“図書館カードコレクター”なんて方もいるらしいですよ(笑)」

キャラクターはっきり、ジャンルに特化した専門図書館

IMG_076一方、研究者やそのジャンルに興味がなければ、なかなか訪れることは少ない専門図書館。「そんな図書館があることすら知らない人が多いんですけど、どこもキャラクターがあって面白いんです。行ってみると敷居も高くないし」と冨澤さん。

「たとえば、上野の『国立国会図書館 国際子ども図書館』。もちろん蔵書もすごいんですが、なんといっても魅力的なのは、その建物です。レンガやガラス、シャンデリア、階段など、明治時代のルネサンス様式の洋館をそのまま残していて、とてもロマンチック。子ども連れの方だけでなく、建築好きの大人も多く訪れていますよ。

アートに興味がある人におすすめなのは、『東京都現代美術館 美術図書室』。国内外の展覧会のカタログや写真集、海外の美術書に雑誌、美術概論など、現代美術に関連したありとあらゆる図書が並んでいます。『世田谷美術館』や『東京都写真美術館』にもライブラリーがありますが、美術館の中にあるので、気づかない人も多いみたいですね」

また、さまざまな企業や団体によって運営されている、バラエティに富んだ専門図書館も見逃せない。

「銀座にある『HOUSE OF SHISEIDO』は、月刊誌『花椿』をはじめ、化粧、ファッション、アート関連の本が揃っていて、ライフスタイル全般に興味のある女性は必見。また、レシピや食に関することが知りたければ、『日清食品 味の図書館』や、高輪の『食の文化ライブラリー』。大手町にある『旅の図書館』は、国内外のガイドブックはもちろん、機内誌や紀行文、また国別に観光情報をまとめてくれているのもうれしいですね。

スタイリッシュで、図書館というより“サロン”という雰囲気なのは、六本木ヒルズの49階にある『アカデミーヒルズ 六本木ライブラリー』。月会費がかかりますが、朝7時~夜12時まで開館していて、パソコンを持ち込んで仕事をしたり、お酒を飲みながら新刊のビジネス書籍を読むこともできます」

そして、世界の国々の大使館や観光局、語学学校などが運営しているところも。あまり知られていないけれど、東京にはこうした海外専門の図書館が数多くある。

「『カナダ大使館 E.H.ノーマン図書館』は、有名な『赤毛のアン』を書いたモンゴメリや、名前にもなっている作家・ノーマンのコーナーのほか、留学についての情報など、カナダのインフォメーションセンターとしての役割も担っています。また、フランス政府公認の語学学校の中にある『東京日仏学院 メディアテーク』は、まさにパリの趣。レシピや写真集など、フランス語がわからなくても楽しい雰囲気ある蔵書が揃っていて、フランス映画や、逆輸入した日本の映画を借りることもできるんです(有料)。

IMG_0106ほかにも、読みたい本を世界70ヵ所の図書館から取り寄せられる、スペイン国営『セルバンテス文化センター東京 フェデリコ・ガルシア・ロルカ図書館』や、韓流ドラマや映画のDVDも数多く所蔵している『韓国文化院 図書映像資料室』などなど。

海外専門の図書館には、その国の料理が味わえるカフェやレストランが併設されていることも多いので、行ったついでにランチを楽しむのもおすすめですね」

残念ながら一般には開放されていないものの、“プラネット”と呼ばれる閲覧室が宙に浮かぶ「成蹊大学 情報図書館」や、昭和初期に建てられた「東京大学総合図書館」など、魅力的な図書館はまだまだたくさん。また、全国の図書館の蔵書情報と貸し出し状況がウェブ上で検索できる、「カーリル」というサービスも始まっている。

「絶版になってしまった本や、気軽に買えない高価な写真集や美術書って、専門家でもない限り、毎日は見ないじゃないですか。だから図書館を自分の家の書庫や本棚代わりだと思って使えばいいんです。東京には、公立・専門を問わずたくさん図書館がありますから、みんなもっと本屋に行くような感覚でふらっと行ったらいいのになぁ、と思いますね」

(*本文中に登場する写真は、すべて「都立中央図書館」のものです)

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