- Culture

山村光春
「ブックカフェ」で過ごす至福の時間。- 009
2010.01.22
“本棚の個性”を楽しみながら、
「ブックカフェ」で過ごす至福の時間。
Story
10年ほど前に突如として巻き起こったカフェブーム。以来、マンガや自転車など特定のテーマを掲げたタイプや、レストラン以上に料理が充実したタイプなど、東京のカフェは着実にその裾野を広げてきた。そんな中、ここ数年増えているのが「ブックカフェ」だ。そこで今回は、カフェやカフェ文化に詳しいエディターの山村光春さんに、オススメのブックカフェを教えて貰いました。Text by Hiroya Ishikawa, Tomoe Tamura / Photo by Shinichi Yokoyama / Photo cooperation by Brooklyn Parlor
「もともと、カフェと本はとても相性が良いんです。ともにデータでは測れないアナログ的な価値観を共有しているので、両者が結び付いてブックカフェが生まれるのは、当然の流れだと思っています」
そう語るのは、雑誌のカフェ特集やカフェ関連の書籍などを数多く手掛けている、エディターの山村光春さん。
「カフェは、フードやドリンクだけでなく、それを取り巻く空間そのものも重要です。また、本はそこに書かれた内容だけでなく、装丁やサイズ、質感といった“モノ”としての魅力もその良し悪しを左右します」
カフェと本には、“中身”だけにとどまらず、それ自体が醸し出す空気感が重要な役割を帯びているという共通点があるのだ。
人気のブックカフェは、棚に”人格”がある
そして、東京におけるブックカフェブームは、原宿の「café&books」(現在閉店)や渋谷の「Dexee Diner」らが先鞭をつけ、一般に浸透させたのが「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」だと山村さんは指摘する。ここはブックディレクターとして活躍中の幅允孝さんが初めて手掛けたお店で、欧米ではポピュラーな書店とカフェの融合を実現。正確には、ブックカフェというよりは“カフェ併設の書店”といった趣の魅力的な空間だ。
「『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』は、書店で売られている本を、コーヒーを飲みながら座って読むという新たな価値観を日本で打ち出した象徴的な店ですね。そして、アフリカの本棚にはアフリカに関する小説やエッセイ、写真集などが並ぶといった具合に、“棚をテーマ別に分ける”ことが当時は画期的でした。“棚が人格をもつ書店”が東京に増えだしたのは、この頃からです」
例えば、2002年にオープンした『ユトレヒト』。ここは従来の書店とは異なり、ひとつの棚にさまざまな本が共存している。それらは高さや奥行きなどのサイズも違えば、文庫や新書、ビジュアル本などのタイプやジャンルすら違う。それを見て山村さんは衝撃を受けたが、よくよく考えてみたら、自分の家の本棚も、同じようにひとつの棚にいろいろな本が並んでいることに気付いたという。
「人はワンテーマで生きているわけではなく、それぞれ、いろいろなことに興味をもっていますよね。自宅の本棚を見れば、それがよくわかります。一見バラバラな本が並んでいる『ユトレヒト』の本棚も、全体を見渡してみるとなにかしらの軸があるんですね。そこに人格を感じます」
古書も含めた独自の品揃えをみせるインディペンデントな書店が増えたことが、結果としてブックカフェの増加へとつながった。いまや人気のあるブックカフェは、“棚が人格を持っている”場合がほとんど。棚作りそのものが、店の個性となっているのだ。
いま注目すべきブックカフェはここだ
では、数あるブックカフェの中で、山村さんのオススメはどこなのか。タイプ別に、注目すべき個性的な東京のブックカフェを挙げてもらった。
「まず、棚に人格があって、カフェとしての魅力もたっぷりなのが、昨秋、新宿にオープンした『ブルックリン パーラー』です。紳士の邸宅のような雰囲気の広々としたスペースもさることながら、本棚には、新書だけでなく古書も並び、これが棚の佇まいに深い味わいを加えています。また雑誌が表紙をみせてディスプレイされているので、コーヒーでも飲みながら雑誌の表紙を眺め、気になるものがあればパラパラッと読めるのがいい。情報収集にも最適な場所ですね。休日なら、昼間からブルックリンラガーを飲みながら本を読むのもオススメです」
ちなみに、『ブルックリン パーラー』に並ぶ本のセレクトはブックディレクターの幅允孝さんが手掛けているが、幅さんが本のセレクトを手掛けたブックカフェがもう一件新宿にある。『ブルースクエアカフェ』だ。
「ここはブルックリン パーラーよりも本の数は少ないのですが、その分、新刊を中心に、今のファッションやカルチャーを感じられる雑誌や本が厳選されて置かれているのが魅力です」
“あくまでも本が主役!”というタイプのブックカフェの中でオススメなのが、『レイニーデイ ブックストア&カフェ』と『コンバイン 中目黒』だと山村さん。
「『レイニーデイ ブックストア&カフェ』は、雑誌『SWITCH』や『Coyote』で知られる出版社、スイッチ・パブリッシングの地下にあって、雑誌の世界観が本のセレクトにも生かされているのが特徴。本棚からは文学や知の匂いがしますね。晴耕雨読を思わせるカフェの名前も好きです。ここではコーヒーを飲みながら、じっくりといろいろな人の言葉にふけるのがオススメです。
『コンバイン 中目黒』は、もともと書店をやっていた人が始めたカフェ。壁一面の棚にはアカデミックな感じの本から気軽に読めるものまで幅広く揃っています。ユーズドの家具やソファが置かれた店内の雰囲気も好きですね。目黒川沿いにあるので、春は桜の眺めが美しいことでも知られています」
桜の絶景が楽しめるブックカフェといえば、半蔵門のフレンチレストラン『ARGO』のカフェも外せないという。
「『ARGO』は皇居のお濠に面したビルの9Fにあるため、お濠沿いの桜が一望できます。本のセレクトは洋書のビジュアル本が中心で、内装もラグジュアリーなので、デートにもいいと思いますね」
マンガが充実、仕事に最適……。自分にとってのオアシスを探そう
ブックカフェ=雑誌や本、という思い込みを覆す、“マンガの読めるブックカフェ”も見逃せない。
「空港のロビーをイメージして作ったという、渋谷のカフェ『LAX』はマンガ本が充実しています。置かれているのは『ワンピース』や『クローズ』など少年誌のマンガが中心。しっかりゴハンも食べられて、居心地もいいですね」
さらに、マンガや雑誌が充実しているネットカフェの中には、ブックカフェとして捉えてみても十分に魅力的な店があるという。
「いろいろなネットカフェに足を運んでいますが、中でも一番レベルが高いと思うのは『グラン・サイバーカフェ バグース六本木』です。スタイリッシュな内装もさることながら、ホテルのような丁寧な接客にも驚きます。ここは雑誌が豊富だし、のぞき見感覚で見たいアイドルの写真集もたくさん揃っているので便利。フリードリンクのレベルも高く、フローズンドリンクにイチゴミルクとかヨーグルトドリンクを入れて、オリジナルのスムージーをつくって飲んでます」
そして、「ほとんど毎日カフェで仕事をしている」という山村さんが、仕事をするのに最高だと太鼓判を押すのが、『丸の内カフェ』だ。
「『丸の内カフェ』は、丸の内にありながら、無料で使えるフリースペースになっているんです。でも家具はIDEEのものでソファもあるし、無線LANもあるし、パソコン用の電源もある。ドリンクは店内の自販機で買えますし、持ち込みも自由。雑誌や新聞もあれば、ビジュアル本も豊富。取材などで近くに来たら、必ずといっていいほどここに立ち寄って、ひと仕事していきます」
お店のごとの棚の個性を楽しんで、食事やお茶もできて、仕事もこなせて……。店によっては、気に入った雑誌や本をその場で購入することもできる。自分の趣味や嗜好にぴったり合ったブックカフェを見つけたら、そこはきっと自分にとってのオアシスになるはずだ。
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